’00.10.24
                                 

命の授業〜「命は受け継がれる」
 
                           
 
○ 主題名  命は受け継がれる
○ ねらい  命は自分ひとりのものではないことに気づかせ、大切にしようとする態度を育てる。
○ 実施学年 第5学年
 神藤晃氏「命は自分一人のものではない」(「道徳教育フォーラム」’99.17明治図書)の修正追試である。
○ 授業の実際
 
 日付を書いた直後の指示。

指示1 ノートの真ん中に小さく「自分」と書きなさい。
 
 教師もまた、黒板の真ん中に「自分」と板書する。

発問1 自分をこの世に生んでくれたのは、誰ですか。
 
 「お母さん。」という声。「お母さんだけのおかげですか。」と問いかけると「お父さんも。」「両親。」という声。

指示2 では、「自分」とお母さんお父さんの関係を図にしてみましょう。
    先生と同じにノートに書きなさい。
 
 図のようになる。(図省略) 

発問2 ところで、お父さんとお母さんをこの世に生んでくれた人は誰ですか。
 
「おじいちゃん。」「おばあちゃん。」これも書き足していく。

指示3 おじいちゃん、おばあちゃんのつながりも図にかきなさい。
 
 ここは、テンポよく進める。だらだらやっていては集中もとぎれてくる。

指示4 同じようにして、さらに「その前」「その前」とさかのぼって書いていきなさい。時間は3分です。
 
 作業中、あちらこちらから子供の声が聞こえる。
「すげぇ数になった。」「きりがないよ。」「ご先祖様がいっぱいだ。」
 教師は、黙ってにこにこして聞いていればよい。
 3分後、どの子も次のような図を描くことができた。(図省略)
 
どれくらいの人数になったか、挙手にて確認する。全員が40人以上書くことができた。多い子で、108人だった。
 間髪入れず、以下の発問群で人数の多さを確かめていく。

発問3 「自分」は何人ですか。
 
 「1人。」

発問4 自分の両親は何人ですか。
 
 「2人。」

発問5 そのまた両親は、何人ですか。
 
 「4人。」

発問6 そのまた両親は何人ですか。
 
 「8人。」

説明1 あなた方の前を一代前といいます。そのまた前を二代前、つまりおじいちゃん、おばあちゃんの時代です。そのように何代前と数えていきます。
 
 

発問7 それでは、自分から数えて十代前では、全部で何人くらいだと思いますか。ノートに予想を書きなさい。
 
 予想であるから、すぐに書かせる。
 一人一人に座ったまま言わせる。「40人。」「50人。」「100人。」「200人。」
「5000人。」など様々な予想が出された。

説明2 実は・・・・(一桁から板書しながら)・・・・1024人です。
 
「へぇー。」というちょっとした驚きの声の中、間髪入れず問う。

発問8 では、二十代前となるとどうでしょう。何人になると思いますか。同じようにノートに書きなさい。
 
 書けたのを確認して同様にたずねていく。
 「2000人。」「2048人。」「10000人。」などこれもさまざまである。
 ここも時間をかけずに、さっと切り上げて説明する。

説明3 なんと、100万人を越えるそうです。自分にたどり着くまでに、全ての人数を合わせますと、計算してみたら・・・950万人以上になりました。
三十代前、五十代前と考えていったらキリがありません。
 
 子供たちは、もう何がなんだかその多さに声も出ない。びっくりしている。
 ちょっとの間の後、ここから少し視点を変えていく。

説明9 さて、それではちょっとここからは未来のことを考えていきましょう。
今から10年から20年経ちました。めでたく結婚しました。(図を描いて)
おめでとーうございます。(笑)そして、かわいい赤ちゃんが産まれました。
 (図を付け足して)おめでとーうございます。(笑)あなた方の将来は実に明るい。
 

指示5 あなたに2人の赤ちゃんが産まれたとして、この先をずっとさっきと同じように書いていきなさい。はい、どうぞ。
 
 先ほどと同様に3分与えた。子供たちは楽しそうに「生まれる。生まれる。」「○○一族は不滅。」などおしゃべりしながら作業している。
 3分後、途中であっても作業を中断させた。
 ここで主発問を投げかけた。

発問9 実にすごい数ですね。
 さて、自分より前の人たちがずっと受け継いできて、今の自分に受け継がれそして自分の後の子供や孫たちに受け継がれていくもの・・・それは何ですか。
 ノートに書きなさい。
 
 すぐ書ける子、書けない子がいた。机間巡視しながらヒントを与えた。「漢字一文字です。」
 全員書いたのを見計らって自由発言させた。以下のものが出された。

・心  ・血  ・命  ・姓  ・名  ・体
 

指示6 この中で、これはおかしい、違うのではないかというものありますか。あったら意見を出してください。はい、どうぞ。
 
 発言したい子に自由に言わせた。

・体というのはおかしい。体は受け継ぐものでなくてつくられていくものだ。
・同じで体が受け継がれたらゾンビみたいで怖い。
・心というのも何となくよく分からない。その時代時代で変わっていくんじゃないかと思う。 
・名は絶対変だ。たとえば健太さんだったら、親も子も孫もみんな健太さんになってしまうし、そういう掟みたいな事はない。
・姓ではないと思う。訳は、結婚する前は別の家族で、名字が違っているからです。
・血が受け継がれるというのは分かる気もするんだけど、結婚する前は違う家族ならその前は、違う家族の血ではないのですか。
・僕は、血だと思います。命というのはたとえば、戦争とか病気とかで一気に家族全滅したら途中で終わっちゃうんじゃないかな。
 

発問10 もう一度聞きます。この中でこれが受け継がれていくのだと考えるものを一つ選んでノートに書きなさい。
 
 挙手させると、以下の二つに絞られた。これはこれでよしとし、最後に教師の考えを示した。

・血・・・・・21人    ・命・・・・・16人
 

説明4 今の自分があるのは誰のおかげですか。両親、そしてそのまた両親。
 さきほど書いたように、たくさんの人たちが生き抜いた命を君たちは受け継いで、今の自分があるのです。
 そして、今の自分がある限り、後の子供そして孫と命は受け継がれ未来はつながり広がって行くのです。
 
 子供たちは、黙って静かに聞いていた。

指示7 今日の授業の感想を書きなさい。
 
 書き終えた子供からノートを提出させ、休み時間にした。
 いくつかの感想文とノートの一部を紹介して終わりとする。

・こんなにもご先祖様がいるなんてびっくりした。自殺をした人のご先祖様は、どう思っているのだろうかと思った。改めて命を大事にしようと思う。(N)
・僕が生まれて二十代前は、950万人もいるとは思わなかった。それと、僕が結婚したとして、子供を産んだら必ず命を与えるのだと感じた。(S)
・命は途絶えさせてはいけないと思った。いろんな人が命を受け継いで私がいるんだ(U)
・命を大事にしようと思う。何万人という先祖の人が自分を地球に誕生させてくれるのが分かったような気がする。(S)
・今日の授業で、命はすごいものなんだなあと思いました。でも疑問に思ったことは何十代何十代と続いているけど、始まりはどこなんだろうと思いました。あと、今の世の中のように、命を粗末にする人や人を殺す人は、残酷で祖先の人は悲しむなあと思いました。(S)
・今日の授業で、命は極限の極限まで続くんだなぁと感じた。(S)
・何万人もの人から命を受け継いで、私たちは生まれてきたということは、とってもすごいことだと分かった。命というものを粗末にしてはいけないと言うことも分かった。(S)
・人の命というものはすごいものだ。なぜならば、十代前は1024人もいたのだ。びっくりした。そんなにいたなんて初めて知った。それに、受け継がれるものは血ではなく命だったのだ。改めて今日の授業は人の命の大切さを学んだ。(K)
・今日の学習からは、何百人、何千人の先祖から血や命を受け継いでいることがよく分かりました。そんな命を粗末にしてはいけないと思いました。(T)
・たくさんの人の血や命が受け継がれながら、自分が生きて来たと分かった。たくさんの人たちの血と命が受け継がれているのだから、命を粗末にしてはいけないと改めて分かった。(S)
・僕の先祖がこんなにいたのは、すごいなあと感じました。あと20代前の人たちは全部で950万人もいたのですごいなぁと思いました。(K)
・こんな多くの命が僕の存在を生んでくれたんだなと感じた。もしぼくが、結婚したら僕の子孫が生まれたら、それはぼくの命なんだな。人間の関係ってすごい。(K)
・先祖がいるのは分かるけど、20代前が950万人もいたなんてびっくりしてしまった。こんなにもたくさんの先祖がいるのなら、命は粗末にできないなあと思いました。(S)
・私は自分から一代、二代、三代前と下っていくと、たくさんの祖先がいるんだなぁと思った。「命」というのは親からもらった大切なものなんだなぁと思った。(S)
・20代前は約950万人だなんてびっくりした。命を受け継いで自分を支えているなんて知りませんでした。死んでしまえば、もう命は受け付けないから命は大事にしないといけないんだと思った。(W)
・命から次々と命のかけらがその生まれてきた人にある。(S)
・ぼくは自分の祖先は、どれくらい続いているのか、そして結婚して生まれた子供がどれくらい続いていくのか不思議に思う。(S)
・自分が結婚したりしないと、そこで終わるということが分かった。だからぼくは結婚して工藤家を増やしたいと思った。(K)
・自分の祖先は、どんどん続いていって、ものすごい数だと思った。もし私の前に死んだ人がいれば、私は生まれていなかったんだなぁと思いました。(H)
・私は自分のことを大切にしたいと思いました。20代前は950万人を越えるぐらいの先祖がいたのでとてもびっくりしました。(K)
・今日の学習から学んだことは、たくさんの人の命に支えられながら生きていることを実感したことだ。あと、これで本当に自殺や悪いことはしてはいけないとも思った。(U)

 


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