【授業実践例 その2−②〜「道徳の時間」と関連させて】
(主題名)
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人間の身勝手さから招いた悲しい元ペットたち(自然愛・動植物愛護)
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(ねらい)
捨てられたペットが今,地域や社会の問題となっていることを知り,それを招いたのは紛れもなく人間の身勝手さであることに気付く。
○授業の流れ
新聞記事のコピー(朝日新聞より)を全員に配る。配布後,まず次のことをたずねる。
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指示1 上半分に載っている記事を見なさい。見出しに指をおきなさい。
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指示2 隣同士どこに指をおいているか確かめてごらん。同じですか?
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大方『首都圏でも野生化』を押さえているが,数名,迷い箸ならぬ迷い指の子がいる。
そこで,どこが見出しなのか明らかにするため次の様に聞いた。
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発問1 この記事に普通の文より大きな字で書かれている部分は,いくつありますか。
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A「元ペット」アライグマ,B首都圏でも野生化,C「天敵なし」生態系に影響,D民家の屋根裏で繁殖の4つが挙げられた。
ここでは時間をかけず,教師の方で説明した。
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説明 A〜D全て見出しです。Aはトッパン見出し,Bを主見出し,CとDを袖見出しと言います。
見出しの役目は重要です。これだけで紙面で何が書かれているか何を言おうとしているのか一目瞭然です。そのために,文字も大きく短い言葉で表しているのです。
こういうところに気を付けて新聞を読むようにするといいですよ。
(参照NIEガイドブック小学校編P2〜3より財団法人日本新聞教育文化財団)
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本時のねらいは別なところにあるので,導入部では時間をかけたくないところではあるが,こういう新聞の特徴や工夫そして見方に少しずつでも折りに触れて教えていくことも大事である。
これを授業の中でさりげなく扱うようにするのである。
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発問2 トッパン見出し『「元ペット」アライグマ』に指をおきなさい。
これはどういう意味ですか。
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子供「アライグマが,前はペットとして飼われていたということ。」
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発問3 では『首都圏で野生化』とはどういう意味ですか。
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我がクラスでは,いかなる授業においても手元に常に辞書を置くようにしている。手早く全員が言葉を調べる。
早い子が答える。
「中心である都市の区域でも,自然に生まれ育っていること。」
これも「天敵」を辞書で調べる。
「食べられたり,襲われたりする敵がいないということ。」と答える。
いわゆる,ここまでは「見出し読み」である。
新聞に関心の薄い子供たちは,こういう「見出し読み」ができないので,小さな活字の羅列による記事への抵抗感から,新聞を読もうとしない要因もあろうかと思う。
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指示3 なるほどね。そうすると,この記事の大体が見出しだけで少し見えてきたね。
それでは,先生が読みますから,読めない漢字があったらルビをふって聞きなさいね。
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読み終えて「困ったことになっているね。」などと言いながら,続けて下半分の「読者の声」の投書欄を読み聞かせた。
その後の指示である。
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指示4 このNO.2の資料の記事を読んで気付いたこと・感じたこと・思ったことをノートに箇条書きで書きなさい。
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5分後,発表させた。以下のような感想があった。
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・捨てられたグレ(犬)はすごくかわいそうだ。
・ひきとってくれる人がいなければ,実験用に使われるなんてひどすぎる。
・犬にも寂しさを感じるものがあるような気がして,かわいそうだった。
・人間はいろんな動物を飼っているんだなあ。
・山本さんは,かわいそうな捨て犬を助けてあげるなんて優しい人だ。
・グレの前の主人はどんな人だったのだろう。
・犬を捨てた人も事情があったんだと思うけど,捨てられた犬の気持ちも考えて欲しい。まるで物みたいに扱っている。
・アライグマが増えて農業被害が出ているのは,やはり問題だ。でも,駆除するのはかわいそうだ。
・グレは前飼われていた人のことが忘れられないんじゃないかなと思った。でも今は,新しい家族に囲まれて幸せだなと思います。
・日本にアライグマの天敵がいないということは,恐いと思った。
・アライグマの成獣は気が荒くて飼育が難しいなら,始めから飼わなきゃいいのにと思う。
・犬を保護した人は,やさしい人だ。前の飼い主にこんな手紙みたいに送る人はそういないと思ったから。
・グレは幸せか,幸せでないか分からない。
・グレを捨てるには,よほどの事情があったのだろうか。それを知りたい。
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なるほど,それなりによく読めていると思った。
「なるほどね。たくさんのこと感じたね。」と言って,次の資料記事NO.3を配り同様に読み聞かせた。その後の指示。
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指示5 主見出しを見なさい。「賛否分かれ悩む住民」とある。
住民が悩むのももっともだなと思う人は手を挙げなさい。
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全員が手を挙げた。
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発問5 よーし。では,みんなも悩んでもらう。
ズバリ聞く。あなたは,捨て猫にエサをやる?(○)それともやらない?(×)
トッパン見出しのどちらかの言葉を鉛筆で囲みなさい。そしてその考えの理由をノートに書きなさい。
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5分後人数分布を挙手で調べた。
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やる○・・18人,やらない×・・9人,わからない?・・7人
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(やらない派×)から自由発言を促し,自由な討論に入っていった。
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×えさを与えれば与えるほど,猫は増えていく。それが問題だからエサは与えない。
×1匹2匹の猫ではない。すごい数になってしまったんだから,エサを与えて解決などしないんじゃないんですか。
×この記事にも書いているけど,かわいそうだからといってエサをやるだけでは,問題は大きくなるばかりだと思う。
○でもエサを与えないで無視していると,人間の生活にまで侵入してきて勝手な振るまいを猫は始めてしまうから,そのままではいられない。
○わたしは,猫を飼っているんだけれど,エサをやれば猫だっておとなしく言うことをきいてくれる。
○捨てられた子猫を見て,ミルクをあげたりしたことがあるので,見殺しにはできない。
○どこか場所を決めて,エサをあげればいいと思う。
×だから,エサを与えると増えていくからいけないと言っているんです。
○わたしは,エサをやるかやらないかは別として,捨て猫を簡単に30万匹も処分しているのはかわいそうすぎると思う。
×見知らぬ猫ですよ。飼っている猫じゃないのですよ。エサをやると次から次と違う猫を連れてきて近所迷惑だ。
○そのままにしていれば,食べ物がなくて死んでしまうし,死んだ後の始末の問題もあるから,ある程度エサをやることを考える。
×見知らぬ猫にエサをあげるなんてお金の無駄だ。
○かわいそうだとは思いませんか。
×かわいそうだということと,エサをやることとは違う問題だ。
○安楽死なんて,猫はそういうことになるつもりで生まれてきたのではない。
○かえってエサを与えないと,悪戯し放題で糞とかして汚い町になっていく。
×でもエサを半端にあげれば,何か余計にかわいそうな気がする。
×アライグマと同じで野生化しているだろうし,飼っているときの猫とは違うんだから何か恐い。
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残念ながら,時間も押し迫ってきたのでこのあたりで中断し,再度,やる(○)やらない(×)わからない(?)のどれかを選ばせ挙手させた。
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○・・・・5人,×・・・・15人,?・・・・14人
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猫を今現在飼っている子もいる。猫は人間にとって身近なペットの一つである。だから,当初は「エサをやる」という考えに多くの子供が賛同したのであろう。また,前時の「生き物を大事にする人間」の授業も心に残っていたのであろう。
しかし,討論を進めるにしたがって,単なる「かわいそう」だけでこの問題は解決しないこと,そしてこの問題の裏には「人間の身勝手な行為」が隠れていることに少しずつ気付いた子供も出てきたのである。
これは,ペットの問題だけではなく,人間社会の問題なのである。
実に大きな難しいテーマである。
それでも子供たちは,短い時間に以上のような討論で,ある程度自分の見方を改め,考えを互いに深めることができた。
時間も残り1分となったので,今日の学習のテーマを考えさせ,ノートにタイトルを考えて書かせた。
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指示6 今日の学習のタイトルをノートに書きなさい。
タイトルの始まりが「人間〜」で始まるようにして書きなさい。
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後ほど,集めたノートを見てみると,以下のようなタイトルが書かれていたので,いくつか紹介しておく。
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・ 人間の動物への愛情のなさ
・ 人間の動物への思い
・ 人間と今の動物の現象
・ 人間と動物の社会問題について
・ 人間を含む生き物の問題と生活
・ 人間だけじゃない,動物も生きているんだ!
・ 人間と同じ生き物
・ 人間は,小さな命をどうするのか
・ 人間のために動物がどうなったか
・ 人間が生き物におこすこと
・ 人間の気持ちと動物の心
・ 人間はどうしたらいいの?捨てられたペット
・ 人間と動物の悩み
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