’97.11.1
NO.40
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詩の授業〜「お経」 |
1.はじめに
詩人というのは、実に面白い作品を作るものだなあと、つくづく感嘆させられるときがある。この作品との出合いでも、そうであった。
詩という文芸は、小説・物語・童話などと並んで、教科書にも堂々と採り上げられるなど文芸作品として確固たる一分野として定着した。
ここで紹介する異色とも思える楽しい詩に出合うと、殊の外、詩の授業を是非してみたいと思うのである。
本教材詩「お経」は、阪田寛夫 作の「ことばあそびうた」とも言える。「こんな詩もあるんだよ。」「詩っておもしろい。」「声に出して読むと、日本語って本当に楽しい響きがある。」ということを、素直に教えてくれる。
理屈抜きに、音読を楽しみたい詩である。
授業の対象学年は3年生である。
2.授業の流れ
教材詩を黙ってゆっくり、ていねいに板書する。
子供にもていねいに視写させる。難しい習ったこともない漢字もあるので、多少時間をかけても視写させる。その際、それぞれの行間を1行分空けて書くように指示しておくとよい。(後で、そこの余白に読み方のふりがなを書かせるためである。)
全員書き終えた後、次のように尋ね、指示する。
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指示1 |
どうですか?読めますか。漢字だらけだね。 |
読めない漢字があるだけに“デタラメ”とは言っても、音読の声は弱々しく細々としている。当然ながら予想されたことである。そこで、読めない字をなくするために読み方を教える。先ほど視写したノートにルビをふらせる。
ここは子供と教師が一緒に問答しながら「読み」を1つずつ確かめていくとよい。ふりがなをふった後、再び音読の指示。
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指示2 |
今度は立って、1回音読しなさい。 |
先ほどよりは、声の音量も大きくなっている。それでも、全般に拾い読みするような、ガチガチした音読である。
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発問1 |
よく読めましたね。ところで、この詩の題名は何ですか。 |
「お経」である。
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発問2 |
「お経」って何ですか。 |
早速、辞書を紐解いている。速い子が見つけた。すぐ起立して発言する。
「仏の教えを書いた書物です。」という答えが返ってきた。
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質問 |
そうです。お坊さんが、手を合わせたりしてお経を唱えているのを見たことや聞いたことがありますか? |
半数くらいの子が知っていると答えた。「ポコポコ何か棒で打ったりして、お葬式とかでしゃべっている。」のだそうだ。3年生は大体においてこの程度の知識なのである。それでも、「良く知っていて凄いですねぇ。」と笑みで話し返してやる。
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説明 |
お経なのですから、この詩は、こういうふうに読むのです! |
多少威張って、教師が演示・範読してみせる。できればお坊さんになり切って、ベルや木魚(なければ机をポンポン叩くなどして)を使いながらリズムカルに読むのである。
いかにもお経を読んでいるように声に出すのがパフォーマンスの腕の見せ処である。読み方は別紙を参照するとよい。
いつもは、どちらかというと物静かに教師の読み聞かせを聴く子供たちも、実に愉快な表情で身を乗り出して耳を傾けている。
それほど、教師の未熟な範読すら凌ぐほどのインパクトをこの詩教材は持っているのである。
範読後、子供たちは、黙っていられず自然に身体を動かし指示がなくても自由に「お経」を始める。
子供とはそういうものである。そういう気持ちになったら、教師は思い切って「自由に読んでごらん。」と言って、解き放ってやればよい。思い思いに「お経」の音読に興じる子供たちがそこにいる。
どの子の表情もニコニコ楽しさあふれんばかりである。
最後に全員で一緒に声を合わせて、音読をする。
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指示3 |
今から、全員お坊さんになります。でも声が揃っていないと何がなんだか分かりません。 声を揃えて調子良く読んでみましょう。さん、はい! |
読みはこの時点でぐーんと「お経」になる。
漢字も読めず、細々としていた声がここでは、自信たっぷりに大きく伸び伸びと教室中に響き渡る。向上的変容の見られる瞬間である。
指示せずとも、子供たちは声のみならず、机をトントン叩きながら、お坊さんになり切るのである。
音読後、「たいへ〜ん、じょ〜ずに、できま〜し〜たあ〜ん。お〜し〜ま〜い〜。」
と教師もお坊さんになって授業を終える。
3.おわりに
詩が詩たる所以に、詩の持つ形式の美しさがあるということも忘れてはならない。日々の授業においては、内容の美しさにばかり目を向けてその理解領域における鑑賞指導で終わることも少なくない。
それはそれで、詩教材の指導の重要なねらいの一つであることは間違いないが、時には、韻文としての詩の魅力である「形式の美」にも目を向けた授業もしたいものである。
本教材は、6行7文字の漢字だけで構成されている。また、音を伸ばして音読することで、母音をしっかりと押さえる手法や終わりに「ん」という撥音を付けて口を閉じて読ませてしまうところが大きな魅力であると言える。
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