’97.12.16

                                                    NO.27

詩の授業〜赤とんぼ(三木露風

                      

1.はじめに

 


言葉にこだわり、分析の観点を共通のものさしとして、討論を生む知的な授業
 

を短文で試みる。

 俳句のような短文で、1時間の授業ができるのである。ある意味で、このことは、国語科指導の力量を問われる目安となると考えている。

考えてみれば、「分析批評」なるものは、短い文の中の言葉の検討である。だからこそ、どの子も限定された言葉に着目する思考活動をせざるをえなくなる。

ここに、知的好奇心を促す、あるいは満たす魅力があるものと思われる。

 本時で扱う教材は、誰もが知っている三木露風 作の「赤とんぼ」である。いわゆる童謡で名高い歌詞として多くの人に知られているものである。

 授業化して分かったことだが、童謡は実にネタの宝庫である。歌詞の背景には奥深いものが隠されているものである。

 対象学年は3年生。国語辞典もある程度使いこなしており、この童謡も半数以上、歌うことができる。

 先行実践の追試という形で展開するが、子供の実態に合わせて修正し授業を試みた。

 

2.授業の流れ


指示1
今日は、みなさんのよく知っている詩を勉強します。視写しなさい。
 

 黒板に、以下の教材文をていねいにゆっくり書く。


  赤とんぼ
                        三木露風
 夕焼け小焼けの赤とんぼ
     おわれて見たのは、いつの日か
 

 全員書いたのを見計らって、ちょっと説明。


説明1
この詩は、曲が付いていて歌になっています。
みなさんは「ぞうさん」の歌を知っていますね。これは、「まどみちお」さんの詩に曲を付けたものです。「金子みすゞ」さんの「わたしと小鳥とすずと」にも実は曲が付いていて歌になっているんですよ。
曲が付けられて歌になっているものが、詩には意外と多いんです。
これも歌になっている1つです。
 

 


指示2
この詩を、先生と一緒に歌いましょう。
 

 みんなでいっしょに声を合わせて歌う。その後の指示。


指示3
この詩を読んで歌ってみて、頭に浮かんできた様子や景色を簡単でいいから、ノートに絵を描いてみなさい。3分です。どうぞ。
 

 個々の詩から受ける情景をイメージさせる。

 机間巡視すると、それぞれ思い思いの絵を描いている。

 「山」があったり、「夕日」があったり、「草木」「雲」「田んぼ」があったり、・・・・。

 1番多く見られたのは、一人の子供が虫とりあみを持って赤とんぼを捕まえようと追いかけている場面であった。

 予想通りである。

 大方かきおえたところで、


発問1
どんなものが見えましたか?
「わたしは、(  )と(  )と(  )をかきました。」と発表してごらんなさい。
 

と列指名等で尋ねる。上記にあげたほか、「すすき」「紅葉」なども出た。それぞれ思い思いの情景をイメージしているようである。

 ここでは全て受容しながら、次を問う。


発問2
では、この詩の季節は、いつってことになるの?
 

 全員が「秋」と答える。


発問3
秋のいつ頃ですか?初め・中・終わりのいつ頃なのでしょうか?
どれかをノートにすばやく書きなさい。
 

 書かせた後、全員にテンポよく列ごとに言わせる。

 ほぼ、3つに分かれるが、あえて深入りせず次に進む。

 ここでは、自分なりのイメージを個々が掴めれば良しとする。


発問4
この詩の時刻が問題です。何時頃の出来事でしょうね。
ノートに時刻を書きなさい。
 

 これまた、列指名でテンポ良く言わせる。その後、指名なし発言。

 ほぼ午後4時〜午後5時半頃とイメージする子が多い。

 「どうして?」と問うと、「夕焼け小焼け」と書いているから、それが見えるのはそのあたりの時刻と、大方の一致をみる。


発問5
さて、ここで出てくる赤とんぼは、一匹ですか?数匹ですか?たくさんですか?3つのうちどれかをノートに書きなさい。
 

 書かせた後、挙手で人数分布を確認。


一匹・・・・3人・数匹・・・・10人・たくさん・・・・17人
 

 自由起立発言させると、


「赤とんぼ」を辞書で調べたら、「秋に群れになってとぶ虫」と書いていました。
 

という意見が出てびっくり。この意見で多くの子が「たくさん」に一気に傾いた。しかし確かな正解とは言えない。ここには何もその解の証拠となるものはないのだから・・・・。

 ここでは教師の余計な説明は要らない。「なるほどねぇ。すごいこと発見したね。」と受け止めてやればよい。

 それぞれが、自分なりの確かなイメージを掴めればいいのである。


質問
自分の最初に書いた絵をみてごらん。一匹ですか?数匹ですか?たくさんですか?
 

 「あっ!一匹だった。」この子はイメージを膨らますことができたのである。

 

 ここまでは、イメージを掴ませ膨らませる補助発問群である。

 次から「言葉にこだわらせる」検討に入る。


発問6
さて、「おわれて」いるのは誰(何)ですか?
ズバリ一言でノートに書いて、持ってきなさい。
 

 順にノートチェックをする。同時に、これはと思うものを板書させていく。


・赤とんぼ  ・人  ・作者   ・雲   ・夕焼け
 

 以上の5つが出された。


指示4
この中でおかしいと思うのはありますか? つぶしていきます。
 

 とりあえず、自由に発言させてみる。


A:「人」がおかしいです。人におわれるなんて、何かこわい。
B:わたしは「作者」がおかしいと思います。「作者」も「人」で すが、「人」がお 

かしいという理由がはっきりしないんだけど・・・。
C:「作者」も「人」もおかしいです。「赤とんぼ」だと思います。
  人間が追われるのはイメージとしておかしいと思いませんか?
D:「夕焼け」と「雲」がおかしい。夕日と雲が襲ってくるような感じはしない。
 

 イメージの思い込み発言が続く。これも予想通りである。

 正解を告げる。


説明2
三木露風さんです。作者なのです。
 

 半数以上あっけに取られている。間髪入れず、たたみかける。


発問7
では、おっているのは、誰(何)ですか?
 

 「雲」「夕焼け」「赤とんぼ」などの声が挙がる。

 当然の事乍ら全て間違いである。


説明3
みなさんは、大きな勘違いをしています。
「おわれる」という言葉を「追いかけられている」と考えていますね。ここが、違うのです。
漢字を書きます。(板書「負われて」)
辞書で「負う」を調べてごらん。
 

 早く見つけた子に言わせる。


わかりました!「背中に乗せる」「おんぶする」と書いています。
 

 これで、「あー、そうだったのか。」という声があちこちで出る。


説明4
そうです。「おわれて」とは、「背負われている」という意味です。
おんぶされているんです。
作者の三木さんが、小さい頃におんぶされて見たのです。
何を、おんぶされて見たのかというと・・・・。
 

 「赤とんぼ!」と子供たちの声。


説明5
その通り!真っ赤に染まった夕焼け空にとぶ、たくさんの赤とんぼなのです。
小さい頃見た赤とんぼが「いつの日か」忘れたけれど、思い出されたのでしょうね。
 

 子供たち黙って聞いている。


発問8
では、負っているのは誰ということになりますか?
 

 「お父さん。」「お母さん。」という声が挙がる。

 時間もきたので、正解を告げる。


説明6
おんぶしているのは、お母さん役をしてくれていたお手伝いさん(姐や)だと考えられています。
三木露風さんは、幼い頃、田舎でおんぶされながら見た赤とんぼのことを、思い出しながらこの詩を書いたのです。
授業を終わります。
 

 

3.おわりに

 

 3分超過してしまった。どこかに無駄があるのである。

 子供たちは、自分の勘違いに気付き、「なるほど。」といった表情を見せていた。それは、新しい発見と本時の授業に満足した表情にも見えたのだが、教師の思い過ごしか・・・。

 しかしながら、言葉を「分かっていたつもりが、分かっていなかったこと」、たった一語にも、「作品を左右するほどの重大な秘密が隠されていること」を、少なからず感じてくれたことだろうと思う。

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