’00.12.8

                                                                                               NO.161

詩の授業〜ゆうひのてがみ

                          

○ はじめに

 以下の詩を使って、5年生を対象に分析批評の授業を試みた。

 視点を検討する授業である。実践にあたっては松本俊樹氏の発問群(教室ツーウェイNO172P24)を参考に授業を組み立てた。


     ゆうひのてがみ
                       のろ さかん
1  ゆうびんやさんが
2  ゆうひを せおって        
3  さかみちを のぼってくる 
4  まるで きりがみのように        
5  ゆうひを すこしずつ ちぎって 
6  「ゆうびん」
7  ポストに ほうりこんでいく 
8  ゆうびんやさんが かえったあと  
9  いえいえのまどに  
10 ぽっと ひがともる
                   (大阪書籍4上より)

 

○ 授業の実際


指示1 これから先生が黒板に書く詩をていねいに視写しなさい。文と文の間はノート一行開けなさい。できた人から、見せにきなさい。
 

 教材詩を板書し、ノートに写させる。何度も言うが、しっかり視写できることは、国語では基本中の基本である。きちんと写せやしないのに、「読む」「書く」「話す」「聞く」力は育とうはずもない。早くできた子供からチェックする。一字一句、誤字脱字や書き方をチェックする。A,B,Cとノートに評価してやる。

 「先生にチェックしてもらった人は、暗記するほど唇読みしていなさい。」と指示を出しておく。空白の時間を作らないようにするためだ。

 全員のノートチェックを終えてから、教師が一回範読する。


指示2 3回立って音読します。ただ読むんじゃありません。読むたびにすらすら読みになるように、自分の持っている力を存分に出して読みなさい。はじめ。
 

 全員着席後、教材詩の一行ずつに1から10の番号をふらせる。


発問1 この詩は、一日のうちのいつ頃を書いたものですか。朝なら朝、昼なら昼とノートに書きなさい。
 

 すぐ書くように命じる。1分後、列指名で答えさせる。

 「夕方」がほとんどである。「朝」「夜」も2〜3名いた。

 なぜ「夕方」なのか問うた。言いたい子に言わせた。


・2行目に「ゆうひを せおって」と「ゆうひ」と書いてあるからです。     
・題名が「ゆうひのてがみ」だからです。
・5行目にも「ゆうひ」という言葉があります。
・9,10行目にも、「いえいえのまどに ぽっとひがともる」と書いているから日が暮れる夕方と考えました。

 

 


説明1 その通りですね。国語の答えは必ず文の中にあります。どこそこに何と書いているから、ここにこういう言葉があるから、という言い方・答え方・考え方がとても大事です。それを根拠といいます。よくできました。
 

 国語では当たり前のことだが、こういうところは教師の方でしっかり教える。


発問2 2行目に「ゆうひを せおって」とあります。これはどういう様子のことを言っているんですか。本当に背中に背負っているんですか。
 

 子供たちは、一斉に「背負う」を辞書で調べ始める。こういう作業を指示されなくてもできるようになるということは、改めて言うまでもないがとても大事なことである。

 辞書をいつでも厭わず引く子供に育てておくことが肝要である。「分かっているつもり」が一番いけない。これは、教師にも言えることである。

 ところで、これは比喩表現である。「せおう」の語意を調べたところで意を解するわけではないが、数名に尋ねてみる。


「ゆうひ」をあたかも「せおって」いるように見えること
 

 大方の子供が、このようにとらえることができる。


発問3 この詩には、このように、あたかもそうであるかのように、たとえの表現、「比喩」といいますが、表現している箇所が他にもあります。どこでしょうか。その行番号をノートに書きなさい。
 

 ここは、テンポよく進める。4,5行目が、比喩表現であることを子供たちは容易に見つけることができた。次に進む。


発問4 この詩から、どんな色が見えますか。この詩から感じた色をノートに書きなさい。
 

 これも1分程度たった後、列指名で座ったまま答えさせた。その際、どうしてそのような色をイメージしたのか短く言わせた。出された色は以下のものである。


「ゆうひ」「いえいえのひ」から・・・・・オレンジ色、赤、黄色
「かげ」「みち」「ひぐれ」から・・・・・・・・・・黒、灰色
「てがみ」から・・・・・・・・・・・・白

 

 ここは、個々のイメージの世界である。全てを受容した。この詩の情景が個々の頭に描ければ良しとした。


発問5 それでは、この詩の1〜3行目までを絵にします。話者は、どこからゆうびんやさんを見ているのでしょうか。話者の目玉も書き入れなさい。
 

 本時の授業のねらいとする“目玉”の問いである。話者の視点を問う。

 ここは、3分以上の時間を与えた。机間巡視しながら、いくつかに類別し、教師側で代表的なもの数名に黒板にその絵を書かせた。以下の図である。


指示3 この中で、これはおかしいと思うものをつぶしていきます。とりあえず、一つ選びなさい。そして、それがどうしておかしいのかその訳も書きなさい。
 

 いわゆる視点の検討に入る。おかしいものを削除していって、のこったもので討論させる。そのためには、あれもこれもと意見を飛び交わす話し合いの仕方を避け、一つずつ検討させる。このようにしないと、ぐちゃぐちゃになる。

 2分の作業後、指名なし発言させ、検討を促した。


・Aはおかしい。話者と郵便屋さんの間に夕日があるからです。郵便屋さんは夕日を背負っているからです。
・同じです。それと、郵便屋さんは坂道を上ってくると書いているから、これは坂道ではなく、普通の道路に見えます。
・Eに質問です。話者は、どこにいるんですか。
・家の中です。
・家の中から夕日を背負っていると言うことが分かるんですか。
・付け足しで、このE絵だと、郵便屋さんが夕日を背負ってではなく、夕日に当たってという感じだと思います。
・Eに反対です。こんなに話者と郵便屋さんの間が近いと「のぼってくる」ではなくて「のぼってきた」になると思います。

 

 以上の意見から、BかCか、それともDかということになった。


指示4 それでは、みなさんにもう一度聞きます。この絵の中で、これが一番相応しいと考える記号を書きなさい。そしてその訳も考えなさい。
 

 2分後、作業を中断させ、挙手にて人数分布を調べた。以下の通りである。


 B・・・・・7人, C・・・・・3人, D・・・・・26人
 

 時間も押してきたので、次のように教師の方で整理して、発言を促した。


指示5 CとDはちょっとした違いはありますが、まずここでは同じ仲間としましょう。Bは明らかにC、Dと違いますから、これはひとつの考えとして分けます。つまりBなのか。C、Dなのかということです。
 それでは、少ない方のB派から意見を述べたら、C&D派というように反論を述べお互いに討論に入っていってください。どうぞ。

 

 以下の発言があった。


・Dに反対です。この絵だと、郵便屋さんが夕日を持っているという感じがします。
・CやDだと坂道という感じがしません。山の上かそこから「のぼってってくる」と いうより「くだってくる」という絵ではないですか。
・Cに反対ですが、夕日がゆうびんやさんの頭の上にある感じで違うと思います。
・でもCやDの絵は、夕日が郵便屋さんの後ろにあると思うんですが。
・同じです。だから「せおって」ということだと思います。
・Bに反対ですが、上から見ていることは分かるんですけど、夕日が人の下にあるの はおかしいと思います。
・でもどこから見ているかだから、坂の上に話者がいることが、はっきりしているのはBではないのですか。
・坂の上というのは分かるんですが、「のぼってくる」と書いているんだから自分というか話者の方へ近づいてきているんじゃないですか。
・それだったら、Bの絵の方がよく分かると思います。

 

 ここで意見がとぎれてしまった。ちょうど時間も終了間際となった。


説明2 先生の考えを言います。これはCかDです。Bならば、ゆうびんやさんが坂道をのぼっていくのを見ている話者がもう一人存在してしまうからです。話者の視点は、まさに「のぼってくる」ゆうびんやさんに注がれているわけですから、真正面から見ていることになります。
 したがって、BよりはCかDと考えられます。

 

 このように告げて、授業を終了した。

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