(C)Two-way/小学校/国語/分析批評                                                             制作・実践:三村 弘
TOSSLAND

                           ’99.6

 

言葉にこだわる授業〜「視点」

                        

1.はじめに

 向山氏は、以下のような「1学年に1つの分析批評の観点」というものを提示している。

 

  1年生から「色彩イメージ」

  2年生から「主役・対役」

  3年生から「視点」

  4年生から「人物関係」

  5年生から「作品の構成・事件の分析・キーワード」

  6年生から「題材・モチーフ」

 

 そこで、文章を検討させる方法として、3年生を対象に「言葉の力」を付ける「視点」に関わる学習をする。

 

2.授業の展開(授業記録より)

 

 板書

 (1)風船が、おりてきます。

 

 この文を絵図にかかせてみるわけであるが、文を図にかくことに慣れていない子供たちであるので、教師側である程度の簡単な基本図を提示した。

 

 指示1

 先生が黒板にかく絵と同じ物をノートにかきましょう。

 

 教師が黒板に描いた簡単な人の絵をノートにかかせる。

 全員かいたのを確認してから、次の作業を促した。

 

 発問1

 この文を絵に表してみましょう。足りないもの(風船)や見ている人の目玉をつけ加えて絵を完成させなさい。

 風船がおりてくる方向も矢印でかき表すと実に丁寧な絵になりますよ。

 

 子供は大方、次の様な絵をかいていた。

 

  ここで、どれが正しいか発言を促す。

 ・Cは、おかしい。矢印が上下にあるのは、どういうわけか?風船が空中に浮かんでいるように見える。文にあっていない。

 ・Bもおかしい。自分に向かってきている。「おりてくる」だから上から下へとゆっくり様子を表しているのだから、それを人は見ていなくてはいけない。

以上のような意見が出されて、クラスでは、Aがこの文にはふさわしいということに落ち着いた。

続いて第二文を板書する。

 

 板書

 (2)風船が、おりていきます。

  

 発問2

 先ほどと同じように、この文を絵に表してみましょう。どんな絵になるでしょう。

 

これも大体、次の3つに分かれた。ここでも同じように検討を促した。

 

 

 ・Bは、もう地面についていて、おりてしまっているからおかしい。

 

という意見が出て、Bは採り下げられた。

AかCということになった。

意見をさらに求めると、ほぼ全員「どちらでもいいのでは」という考えの一致を見た。

 しかしながらである。目の位置が問題である。

つまり、話し手は、どの方向で風船を見ているかということである。

「おりてきます。」は、前述のように、風船は自分の目上にある。

即ち下から上のほうへ風船に視線が注がれている。

しかも「おりて」だから徐々に視線も上から下へと動いているのである。

「おりていきます。」は「いく」のだから、風船が自分の視線より下位にあると考える。

そして、「おりて」だから徐々に視線も下へ下へと動いているのである。

 教師の解を告げる。

 

  Cが、Aよりいいです。

   説明を加えまとめる。  

 説明1

 文だけでも、どこから見て書いたかが分かるのです。話し手の目がどこにあるのか、どこから見ているのかということが、文の中では大事なポイントです。これを「視点」(板書)と言います。

 

 「視点」という言葉を押さえた後、演習として、次の教材文を使って「視点」の検討をしてみることにした。板書する。

 

(A) キツネが、雪の上の足あとをつけて、こっそりしのびよってきたので、やぶのこちらにいたカモは、そちらをふり返って見ました。 「おや、ずるいキツネがやって来たわ。」

  (B) キツネが、雪の上の足あとをつけて、こっそりしのびよって行くと、やぶのむこうにいるカモが、こちらをふり返りま  した。「おお、うまそうなカモがいるぞ。」

 

 

 指示2
 この2つの文の違いは何でしょう。これは、ずばり、視点の違いなのです。先生と同じように2つの絵をノートにかきなさい。

 と言って、下の図を板書する。

 

 

 発問3

 AとBの絵の○の中には、キツネ、カモどちらが入るでしょう。

 ○にキツネとカモを書きなさい。

 

 本来なら、子供がかいた絵を元に討論させたかったが、残念ながら時間がなかったので、かいた子供から、ノートを持ってくるように指示した。○×をつけて返す。それを何度か繰り返す。

 頃合いを見て、正解を板書した。

 

 どうしてこうなるのか確かめるため、次の様に問うた。

 

 発問4

 Aのような図になるためには、Aの文にどんな言葉があるからですか。

 

 以下の2つの意見。大いにほめた。  

 ・キツネが、しのびよって「来た」と書いている。

 ・やぶの「こちら」にいたのはカモだから、手前の方。

   

 発問5

 では、Bのような図になるためには、Bの文にどんな言葉があるからですか。

 

 発問4で意見が出ているので、対比的に言葉を容易に挙げることができた。

 

 ・キツネがしのびよって「行く」と書いている。

 ・やぶの「むこう」にいるカモと書いているから、向う側はカモ。

 ・会話がキツネの文だから、こちらから見ている。

 

 これらの意見も大いにほめた。

 ここで残念ながら時間切れであった。

 最後に、教師のほうで、次の様に話して授業を終えた。

 

 説明2

 話し手がどこから見ているのか、その目や視点で文を読むと、もっと文の中身が分かってきます。つまり、視点が違うと、文も違ってくるのです。それを表す言葉に気を付けて読むようにしましょう。


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