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ユーロ2000 9 
6月21日水曜日。その日のポルトガル語のレッスンは11時半から1時までです。
いつもならジョンは5分〜10分は遅刻して来ます。
そしてフランシスカに「イギリス人は時間に正確ね。」と
からかわれるのです。
でもこの日、11時半きっかりにフランシスカの家に到着すると、
なんと、もうジョンはそこにいました。
「おはよう。ジョン、早いね〜。」
「おはよう。クリ。そう言う日もあるさ。」
こわばった雰囲気が漂っていました。(^^;)
「水、水を用意しなくちゃ。ちょっと待っててね。」
フランシスカがバタバタとキッチンの方に走ります。
「クリ、二つお願いがあるんだけど。」
「何。」
「ペンと紙を貸してくれ。」
ジョンはレッスンだと言うのにペンとノートをきちんと用意して
くることは稀です。いつもペンと、ノートの2ページほどをちぎって
渡すのですが、レッスンの間中ペンをもてあそんだり口に入れたり
するので、貸したペンが戻って来る時はピンが曲がっていたり
壊れていたりすることがままあります。
「私のペンを喰うなっ!」と警告することはしょっちゅう。
用意してこいよ、ジョン〜、と思いながら、
「はい。これ。」
バッグからペンと紙を取り出して渡し
「二つのお願いってペンと紙のこと?」と聞くと、静かに首を振り
「いや、別にもう一つある。」
「なに。」
「どうか今日は、Fから始まることの話は絶対にしないでくれ。」
F・・・・Futebolか。(サッカーのことです)
「いいよ。最初からする積もりないし。」
「頼むよ。」
その日のレッスンはフランシスカも私も腫れ物に触るように
ジョンに接しなくてはなりませんでした。月水と週2回のレッスン、
いつも水曜日は「Bom fim de semana」(良い週末を)
と言ってフランシスカと別れます。
でもこの日はつい口が滑って
「良い週末を、あっ、そうだ、フランシスカ、また土曜日に・・・あっ。」
と言ってしまいました。
土曜日にね、と言うのは土曜日にポルトガル−トルコ戦があるので、
またメッセージ交換しようね、と言う意味だったのですが。
「オウ、クリ、そうね。」とフランシスカが笑います。
ジョンが「その土曜日って、なに。」
「ううん、なんでもない。」
「言ってみなよ。」
「なっ、なんでない。」
ははーん、と言う顔をしてジョンがシニカルに笑いました。
「違うっ、ジョン、ホントにFの話をする積もりはないから。」
「そうよ、クリと私、もう昨日の夜電話でそう決めてたんだから。」
「そっか、昨日の夜にもう決めてたのか。ははは。」
力無く笑い、エレベーターに乗り込みます。
ここのところいつも水曜日は、スペイン人の友達スザンナも一緒に
お昼を食べています。でもなんと運の悪いことにこの日はスザンナは
就職の面接があり来られないと電話をして来ました。
腫れ物くんと二人で食事〜〜〜。
駅に向かう途中、会話を試みるのですが、サッカーの話題を無理矢理
避けるため、時々気まずい沈黙が流れます。
ジョンは明らかに不機嫌なのでしたが、それを必死で隠しているの
でした。(^^;) どんよりと暗〜い雰囲気です。
「ジョン、今日、一緒にごはん食べるの大丈夫?」
「ん? なんで?」
「いやあ、昨日の翌日で、調子悪そうだから。」
「気を遣わなくて大丈夫だよ、クリ。お昼食べよう。」
ジョンは日本料理が大好きです。
この日は日本料理を食べよう、と言うことになっていたので、
タクシーを拾ってレストランに向かいました。
タクシーの中では、何とか会話を試みるのですが、なかなか
サッカーの話題以外のことを話すのは大変です。
「ねえ、Fの話で悪いけど、チェルシーの話していい?」
「チェルシーのならいいよ。」
「ジョアンピント、昨日近くのメルセアリアで聞いたら
スポルティングに行くって言ってたよ。」
「彼はスポルティングには行かないよ。
スポルティングのサポーターたちが、アルバラーデのスタジアムに
『ジョアンピントは嫌いだ』とか『ジョアンピント来るな』とか
でかでかと落書きしたらしいから。彼はベンフィカのイメージが
強すぎるからね。ああ、もしかしたらポルトに行くかもね。」
「チェルシーには行かないのかな。イタリアに行くとも聞いたけど。」
「どうかな。それより、昨日のニュース見た?」
「なに。」
「若い子たちがカスカイスからの電車を盗んだらしい。」
「電車を盗んだ? いつ?」
「夜だったか、朝だったか忘れたけど。」
「なっ、なんで?」
「お金のために。」
「電車を盗んだの? それを売ってお金にするの?」
そこまで会話したら、ジョンが大声で笑い出しました。
「電車を盗むわけがないだろ〜。電車を襲って、中にいる人たちから
お金を奪ったんだよ。」
(roubarと言う動詞は、「盗む」と言う意味も
「〜に対して強盗をはたらく」、と言う意味もあるので、会話が
おかしくなってしまったのでした。)
「電車を盗むかあ、どうやってやるんだ。くっくっく。」
少し空気がなごみました。
でも話題、話題。他になんか話題はないかな。
あっ、そうだ。
「その後、彼女とはうまく行ってる?」
彼には最近半年以上の片思いの末、やっとうまく行った彼女がいる
のであります。これはいい話題でした。彼女と幸せ絶頂のジョンは、
それから水を得た魚のように、嬉しげに語り始めたのであります。
(つづく)