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はじめに

ここポルトガルでは、クリスマスをNATALナタル、と呼んでいます。

キリスト教の国らしく、勿論とても大切な行事です。ナタルには、

プレゼピウと言う、キリスト生誕の馬小屋の模型を各家庭に飾るのが

習わしで、これはクリスマスツリーよりも重要で歴史のある、

クリスマスのシンボルです。馬小屋の中には基本的には赤子である

イエス・キリストがおります。 それから好みにより馬や牛、マリア、

マリアの夫ジョゼ、それにイエス様の生まれた場所の上にある星を

目印にイエス生誕の地に辿り着いたと言う東方の三賢人(王)を

飾ります。飾り付けは各家庭によってさまざまです。大きさもいろいろ。

クリスマスにはこのプレゼピウを飾り、ツリーを飾り、七面鳥や

バカリャウ、仔やぎを焼いたもの、ボーロ・レイを食べ、家族で時を

過ごすのです・・・・・。

 

イエス様、聖母マリア、父ジョゼ
馬小屋には牛とロバが
東方の3賢人(王)
馬小屋の中で、イエス・キリスト生誕
クリスマスのシンボル、Presepio。

アミーゴ (ともだち)

 昔々、あるところに周りをぐるりと庭で囲まれた、黄色い家が

ありました。

庭にはリンデンやシラカンバ、とても古い杉の木、桜の木、それに

プラタナスが2本。杉の木の下で、ジョアンナはよく遊んだものです。

大きな幹の陰に、秘かに苔や草や小枝でお家をたくさん作り、

それからもし小人たちが本当にいるのならば、このお家に住むことが

できるだろうなと想像を巡らせました。そして、小人たちの王さまの

ために他のものよりも大きくいりくんだお家を作りました。

 

 ジョアンナには兄弟がおりませんでしたので、いつも一人で遊び

ました。でも時折、いとこやこども達が遊びに来てくれました。

また、時々パーティに出かけることもありました。でも、この訪問先の

こども達や彼女の家に遊びに来るこども達は、彼女の真の友達では

ありませんでした。苔のお家にいたずらしたり、お庭をひどく踏み

にじり荒らしたりしました。

ジョアンナは他のこども達と遊べないのをとても悲しく思い、自分は

一人だなあと感じるのでした。

 

 しかし、ある日一人の友達に出会いました。10月のある朝のことです。

ジョアンナは塀の上に上っていました。そこに1人の少年が通りかかり

ました。ボロボロの服を身にまとう彼の瞳には2つの星が宿るごとく

輝いておりました。秋の葉を見て微笑みながら、歩道のへりを

ゆっくりと歩いていました。ジョアンナの心臓は早鐘のように打ち

ました。

 

「ああ!」とジョアンナは言いこう考えました。

(この子とはお友達になれるみたい。ええ、絶対にお友達になれる。) 

それから高い塀の上から彼に声をかけました。

「おはよう!」

2人の間に一瞬沈黙が流れました。ジョアンナはこう尋ねました。

「お名前、なんて言うの?」

「僕? マヌエル。」少年は答えます。

「私はジョアンナ。」

そしてまた2人の間に沈黙が流れました。

遠くの農場で時を告げる鐘が鳴っています。

少年が言いました。

「きみのお家の庭、とてもきれいだね。」

「ええ、見にいらっしゃいよ。」

 

 ジョアンナは塀から折り、門を開けました。

それから2人は庭に行きました。少年は庭のもの1つ1つをじっと

見つめていました。ジョアンナは彼を水槽のところに連れて行き、

金魚たちを見せました。果樹園や、オレンジの木々や菜園にも行きました。

それから犬たちを読んで彼を紹介し、猫の眠る薪小屋を見せ、

木々や草花を見せました。

「きれいだ、とてもきれいだね。」少年は心からそう言いました。

「ここにね。」ジョアンナは言います。

「杉の木があるのよ。いつもここで遊ぶの。」

それから2人は杉の木の丸い陰の下に座りました。

朝の光が庭を包んでいました。全てが新鮮で平和。時々リンデンの

高いところから、黄色い葉が舞い落ちています。

ジョアンナは石と枝、そして苔を取りに行き、2人で小人の王さまの

家を作り始めました。

 

 こんな風にして、大分時間が経ちました。遠くの工場から警笛が

聞こえて来るまで。

「もう正午だ。」少年は言います。「もう帰らなくちゃ。」

「どこに住んでいるの?」

「向こうの松林の中だよ。」

「そこがあなたのおうち?」

「うん、でもまあ、住むにはあまり良くないな。」

「どうして?」

「僕のおとうさんは空にいるんだよ。だから僕たちはとても貧しいんだ。

おかあさんは一日中働いているけど、お金がなくて家が買えないんだよ。」

「でも、夜はどこで寝ているの。」

「松林のご主人が、牛やロバが眠る小屋を持っているんだ。それで、

 親切にそこで僕も眠っていいと言ってくれてるんだよ。」

「じゃあ、どこで遊ぶの?」

「どこででも遊ぶよ。以前は街の中心に住んでいて歩道や排水溝の

 ところで遊んだよ。空き缶や古新聞、古着や石なんかで。今は松の

 木のところや道端で遊んでる。芝や動物や花々とね。どこでだって

 遊べるよ。」

「でも、私はこのお庭から出ることが出来ないの。明日も来て私と

 遊んでくれる?」

 

そしてその日から毎朝、少年はそこを通り、ジョアンナは塀の上に

上って彼を待つようになりました。彼が来るとジョアンナが門をあけ、

2人は杉の丸い陰に座るようになりました。

 

 このようにして、ジョアンナには友達が出来たのです。

彼は素晴らしい友達でした。彼が通ると花々は彼のほうを向き、

辺りの陽の光は一層輝きを増しました。ジョアンナは台所に行きパンを

取って来て、2人でやってくる鳥たちにパンくずを与えました。

フェスタ(パーティ)

クリスマスが来るその日まで何日も何週間も経ちました。

クリスマスの日にジョアンナはビロードの青いワンピース、黒い

エナメルの靴を身につけ、きれいに髪をとかして、7時半に寝室から

出て階段を降りました。

下の階に着いた時、大広間からおしゃべりする声が聞こえました。

話をしているのは大人たちです。でもジョアンナは、彼女が入る

ことが出来ぬようドアが固く閉ざされているのを知っていたので、

食堂に行き、もうグラスたちが並べられているか見ることにしました。

グラスたちは廊下の半ばにある暗い大きな食器棚の中にずっとしまわれた

ままです。この食器棚には2つ扉があり、なかなかうまく開かず、

大きな鍵が必要でありました。中ではグラスがひっそりと輝いています。

その中は素晴らしい、秘密の洞穴のようでした。その閉ざされた空間には

たくさんのものが、毎日の生活に必要でないたくさんのものが、

ちょっぴり魅力的なものがきらめきながらしまわれていました。

食器や、ガラスの小瓶、箱やクリスタル、ガラス工芸の鳥たちなど。

また中にはろうで出来たりんごが3つ、お皿に乗っており、そばには

銀の少年が立っていました。金の花の施された復活祭の大きな赤い

玉子の食器もありました。

 

 ジョアンナはそれまで食器棚の奥のほうまでちゃんと見たことは

ありませんでした。開けることを許されていなかったからです。

時々召使いが2つの扉の間からのぞき見させてくれる、その時のみが

中を見るチャンスでした。パーティの日になると、食器棚の奥の陰の

中からグラスが取り出されます。明るく透明で輝いたグラスたちは

お盆の上でいい音を立てます。ジョアンナにとって、あのクリスタルの

いい音は、パーティの音楽そのものでした。

 

 ジョアンナはテーブルの周りをぐるりと一回りしました。グラスたちは

既にそこに並べられ、冷たく美しい輝きを放っていました。

食器棚の奥から来たと言うよりも、まるで山の泉の中からやって

来たようです。

ろうそくには灯がともされ、その明かりはクリスタルに映っていました。

テーブルの上にはいつもは見られない素敵なものがたくさん

ありました。ガラスのボール、金色の松ぼっくり、赤いボールのついた

あの尖った緑の葉っぱのひいらぎの植木鉢。

パーティが始まる。クリスマスが。

 

 それからジョアンナは庭に行きました。クリスマスの夜の星はいつもと

違うと言うことを知っていたから。

門を開けて、ベランダから階段を伝って下に降りました。外はきりりと

とても寒く感じました。リンデンやシラカンバ、桜の木々の葉が

はらはらと舞い落ちていました。木々の枝はまるで黒いレースの

ようです。杉の木の枝だけはすっぽり包まれて見えませんでした。

 

 そして、とても高い木のずっと上のほうには、深い暗闇と空が

広がっていました。この暗闇の中、星は美しく瞬きそこにある何よりも

明るく光っていました。ここ、下の世界ではパーティがあり、それ

だからいろいろキラキラしたものがある。灯のついたろうそくや、

ガラスのボールや、クリスタルのグラスみたいに。でも空ではもっと

大きなパーティが繰り広げられているんだ。何百万も何百万もの

星たちで飾られて。

ジョアンナは暫くの間空を見上げたままでした。何も考えずに、

暗く輝く高い空の夜の闇に広がる幸せを見つめていました。

 

 それから、家に戻ってドアを閉めました。

「まだ晩ごはんまでにはたっぷり時間があるわよね。」彼女は廊下を

横切っていた召使いにそう質問しました。

「ええ、嬢ちゃん、まだもう少しありますよ。」召使いは答えます。

ジョアンナはコックのジェルトゥルーデスに会うため台所に向かい

ました。彼女は特別な人でした。どんなに熱いものも火傷することなく

触れ、どんなに鋭いナイフでも怪我することなくあやつり、何でも

知っていてすべてうまくこなしました。ジョアンナは彼女を自分の

知り合いの中で最も大切な人だと思っていました。

 

 ジェルトゥルーデスはかまどを開けて、クリスマス用の七面鳥2羽に

身をかがめているところでした。七面鳥をひっくり返してはソースを

かけています。七面鳥の皮はいっぱい詰め物をされた胸のところで

ピンと張っており既にこんがりと黄金色に焼けていました。

「ジェルトゥルーデス、一つ聞いて欲しいんだけど。」

ジョアンナは言います。ジェルトゥルーデスは頭をあげました。

その顔はまるで七面鳥のようにこんがりと焼けているようでした。

「なあに?」

「わたし、どんなプレゼントがもらえるかしら。」

「さあ・・・。」ジェルトゥルーデスは言いました。

「当てられませんね。」

でもジョアンナはジェルトゥルーデスの博識をとても信頼していた

ので、質問を続けました。

「じゃあ、私の友達はたくさんプレゼントをもらえるかしら?」

「どのお友達?」コックは聞きます。

「マヌエルよ。」

「マヌエルは、ダメ。プレゼントは1個ももらえませんよ。」

「プレゼントを1個も?!」

「もらえないですよ。」コックは首を振りながらそう言います。

「でも、なぜ? ジェルトゥルーデス。」

「だって、彼は貧乏だもの。貧乏人はプレゼントはもらえませんよ。」

「そんなこと、あり得ないわ。ジェルトゥルーデス。」

「でも、そう言うものなのよ。」ジェルトゥルーデスはかまどの蓋を

閉めながらそう言います。

 

 ジョアンナは台所半ばに立ちつくしてしまいました。そう言うものなの・・・

と思いながら。ジェルトゥルーデスは世界中の全てを知っている、

と彼女は知っていました。毎朝肉屋の男や魚屋、果物屋の女と

討論をかわすのを聞いていましたが、ジェルトゥルーデスはいつも

正しかったのです。30年前から朝7時に起きて夜11時まで働いて

いるのです。彼女は近所で何が起こったか全て、人々の家の中で

何が起こったか全てを知っていました。どんなニュースもどんな人々の

噂も。お料理のレシピは何でも知っており、どんなケーキも作り、

どんな肉も魚も、果物も野菜も知っていました。彼女は間違えたことが

ありません。世の中を、物事を、人間を知り尽くしていました。

でも、ジェルトゥルーデスが言ったことはまるでウソのように奇妙なこと

でした。ジョアンナは台所で、考えこんでしまいました。

 

 突然扉が開き、召使いが現れてこう言いました。

「いとこの方たちがもう到着されましたよ。」

ジョアンナはいとこたちに会いに行きました。

それから数分後に大人達も現れて、皆でテーブルにつきました。

クリスマスパーティの始まりです。

辺りはシナモンと松の香りに満ち、テーブルの上のもの全てが輝いて

いました。蝋燭が、ナイフが、グラスが、ガラスのボールが、金の

松ぼっくりが。

人々は笑い、おのおの「クリスマスおめでとう」と言い合いました。

グラスを鳴らす音がパーティの雑踏と喜びの中に響いています。

これらを眺めながら、ジョアンナは考えました。

(ジェルトゥルーデスは、勘違いしたに違いないわ。クリスマスは

 全ての人のためのパーティよ。明日、マヌエルはきっと全てを

 話してくれるわ。彼もプレゼントを貰っているに決まってるもの。)

こう考えることでジョアンナは少し気を取り直し、嬉しくなりました。

クリスマスの晩餐は、毎年同じでした。

始めにカンジャ(鶏のスープ)が着て、それからバカリャウアッサード

(干し鱈の焼いたもの)、七面鳥、玉子のプリン、ラバナダにパイナップル。

晩餐の終わりには全員が立ち上がり、ドアをいっぱいに開いて、

居間に入ります。電気は消えていて、クリスマスツリーの

ろうそくだけが灯されていました。

 

 ジョアンナは9歳であり、クリスマスツリーを既に9回見ていました。

でも、見る度にいつもそれはまるで初めて見るように思うのでした。

ツリーからは、全てのものの上にまぶしく素晴らしく宿る光が輝き

溢れています。まるで、あの東方の三賢人をイエス様のところに

導いた大きな星のように。

これがクリスマス。

クリスマスだから、木は光で彩られ、その枝には素晴らしい、あの遠い

昔の夜に我らのイエス様がお生まれになったしるしの喜びの思い出が

飾られているのです。

 プレゼピウの中では、陶土で出来た人形たちが・・・赤ちゃんや、

聖母、聖ジョゼ、牛とロバが、ずっと絶え間なく会話を続けている

ように見えました。この会話は、見ることも聞くことも出来ませんが。

ジョアンナは、それを見つめて、見つめて、見つめました。

時々、友達のマヌエルのことを思いました。

いとこの一人が腕で彼女を押しました。

「ジョアンナ、あそこに君のプレゼントがあるよ。」

ジョアンナは一つまた一つと、包みと箱を開けました。

人形、ボール、色とりどりのデザインの本、絵の具箱・・・・。

彼女の周りでは皆が笑い、おしゃべりをしていました。

皆がそれぞれどんなプレゼントを貰ったか、おしゃべりしながら

見せ合っていました。

ジョアンナは思いました。

(たぶん、マヌエルは自動車のおもちゃを貰ったわ。)

クリスマスパーティは続きます。

大人達は椅子やソファに座りおしゃべりを続け、子供達は床に座って

遊んでいました。

それから誰かがこう言いました。

「11時半になったわ。ミサの時間よ。子供達はもう寝なくちゃ。」

それから、人々はその場を立ち去り始めました。

ジョアンナのパパとママも、そこを出ました。

「お休みなさい。可愛い子。メリークリスマス。」彼らは言いました。

それから扉を閉じました。

それからすぐに、召使い達が去りました。

屋敷はとてもしずかになりました。年老いたジェルトゥルーデスだけが

台所に残り鍋の後かたづけをしていただけで、後は皆ガロのミサに

出かけてしまいました。ジョアンナは台所に行きました。

ジェルトゥルーデスと話をするのにはちょうどいい頃でしたから。

 

「クリスマスおめでとう。ジェルトゥルーデス。」ジョアンナは

言いました。

「クリスマスおめでとう。」ジェルトゥルーデスは答えました。

「ジェルトゥルーデス、あなたが晩餐の前に言ったこと、本当?」

「私、何を言いましたっけ?」

「マヌエルはクリスマスプレゼントを貰えないって。

 だって、貧乏な子供たちはプレゼントが貰えないからって。」

「もちろん、本当ですよ。私は作り話は言いません。

 プレゼントもないし、クリスマスツリーも、七面鳥のごちそうも、

 ラバナダスのお菓子もないんですよ。貧乏人は貧乏人なんです。

 貧しいのですよ。」

「でもそしたら、彼らのクリスマスはどうなるの?」

「いつもと同じように過ごすんですよ。」

「いつもと同じように?」

「スープを一つと、パンを一切れでね。」

「ジェルトゥルーデス、それ本当なの?」

「もちろん、本当のことですよ。でもお嬢さん、今はもう寝た方が

 いいですよ。もうそろそろ零時ですからね。」

「お休みなさい。」

ジョアンナはそう言い、台所を出ました。

階段をのぼり、寝室に行きました。クリスマスプレゼントがベッド

の上に置いてありました。ジョアンナは一つ一つを見つめて、こう

思いました。

(人形、ボール、絵の具と本の箱。

 皆わたしの欲しかったものばかり。

 わたしの欲しかったものをくれたんだ。

 でも、マヌエルには誰も何もあげない。)

それからプレゼントの傍らの、ベッドのへりに座り、ジョアンナは

寒さと暗闇と貧しさに考えを巡らせました。あの、家とは呼ぶに

呼べない動物たちの囲われた場所で過ごすクリスマスの夜はどんな

ものだろう。

(あそこにいるのはどんなにか寒いかしら!)

(あそこにいるのはどんなにか暗いかしら!)

(あそこにいるのはどんなにか悲しいかしら!)

彼女は思いました。

それから、凍える家畜小屋を想像しました。何も光のないそこの

藁の上でマヌエルは眠るのだわ。牛とロバの温もりだけで。

「明日、彼にわたしのプレゼントをあげよう。」彼女は言いました。

それからため息をついてまた考えました。

(明日ではだめだわ。クリスマスの夜は今日なんだもの。)

 

 窓辺に行き、ガラス越しに外をそっと見ました。マヌエルは眠って

いる。明日にならないとやって来ない。向こう側に大きな黒い影が

見えました。それは、松の木でした。

それから、教会の塔から鳴り響く力強く澄んだ12の鐘の音を聞きました。

(今日、)ジョアンナは思いました。

(今日じゃなきゃだめ。あそこに今、行かなくちゃだめ。

 クリスマスの夜に、プレゼントがなくちゃだめ。)

クローゼットに行き、上着を取って身につけました。それからボールと、

絵の具の箱と本を手に取りました。マヌエルは男の子だから、

人形はきっと気に入らないでしょう。

一足、一足階段を降ります。降りるたび足音が響きました。

でも、台所ではジェルトゥルーデスが大きな音を立てながら鍋の

後かたづけをしており、そのため彼女の足音は聞こえませんでした。

食堂には庭に続くドアがありました。ジョアンナはそこを開けて、

掛け金をかけて外に出ました。

庭を横切ります。

アレックスとシリビータが吠え始めました。

「わたしよ、わたしなのよ。」ジョアンナは言いました。

犬たちは彼女の声を聞いて、大人しくなりました。

それからジョアンナは庭の戸を開けて外に出たのでした。

エストレラ(星)

 道の半ばまで来て、自分がひとりぼっちだと思ったら、彼女は急に

もと来た道を引き返したくなってしまいました。

木々は巨大で葉のおちた裸の枝は空に延び、幻想的な鳥たちのような形を

作っています。道はまるで生きているようでした。

人っ子一人いない無人の世界。この時間には誰もここを通らないのです。

皆ガロのミサに行ってしまっているのです。それぞれの家の庭の戸も窓も

固く閉ざされています。人々はおらず、景色だけがあります。

でもジョアンナには、まるでそこにあるもの全てが人々のように彼女を

見つめ彼女に聞き耳を立てているように思えるのでした。

(こわい。)彼女は思いました。

しかし、何も見ないようにして歩くことで、前進することが出来ました。

道の終わりまで来て右に曲がった時、2つの塀の間に近道を

発見しました。その脇道の終わりには、無人の農場が広がっていました。

すっきりと見渡せる夜。塀も、木々も、家もない場所。

真夜中の深い暗闇には全てが輝いています。

余りの静か過ぎて、静寂そのものが歌のように響いています。

ずっと向こうに、松の木が固まる黒い影が見えました。

 

(あそこまでたどりつけるかしら?)ジョアンナは思いました。

それでも歩き続けました。

足が霜のついた草に埋まります。その平原では、冷たい雪まじりの

風がまるで顔を切りつけるナイフのように、吹いていました。

(さむい。) ジョアンナは思いました。

でも、歩き続けました。

だんだん近づくにつれて、松の木は大きくなって行き、しまいには

ものすごく巨大に見えてきました。

ジョアンナは平原の途中で一瞬歩くのをやめてしまいました。

(どちら側に家畜小屋はあるのかしら?)

そして何か目印になるものはないかと辺りをぐるりと見渡しました。

でも右側には何もなく、左側にも何もなく、前方にもなんの目印も

ありませんでした。

(どうやって行ったらいいの?) ジョアンナは自問します。

それから頭をあげて空を見つめると、そこをゆっくりと星が流れて

行っています。

(どうやらこの星はお友達みたいに見えるわ。)彼女は思いました。

それから、その星について、歩いて行くことにしました。

まもなく松林のところに辿り着き、中に入りました。と、同時に

一瞬にして周りは大きな陰で覆われてしまいました。それは巨大な、

緑色と紫色、黒と青の影たちで、大きな身振りで踊り狂っているようです。

風が針のような松の葉の間を通り抜け、その音はまるで何かを呟いて

いるようです。これら影と音の中に佇みながら、ジョアンナはとても

恐くなり逃げ出したくなりました。でも、影たちの隙間から見える、

はるか高い空の向こうに瞬く星を見つけて、また歩き続けるのでした。

もうそろそろ、松林の半ばと言うところで、かすかに足音が聞こえた

気がしました。

(狼かしら?)

そう思い、足を止めて聞き耳を立ててみました。

足音がどんどん近づいて来ています。

松林の間から、こちらに向かって歩いてくる大きな人影が見えました。

(どろぼうかしら?)

人影はジョアンナの前で止まりました。見ればそれは王様でした。

金の冠を頭にのせ、肩からはダイヤモンドがたくさん刺繍されている

長い青いマントを下げていました。

「こんばんは。」ジョアンナは言いました。

「こんばんは。」王も答えます。「君の名前は何と言うのだ?」

「わたし、ジョアンナ。」とジョアンナが言うと

「私の名はメルシオール。」と王は言いました。それからこう質問

しました。「夜のこんな時間にどこに行くのだ?」

「わたしは、星について行っているの。」

「おお、私もだ。」王は言います。「私も星について行っているのだよ。」

それから2人は一緒に松林の中を通り抜けて行きました。

ジョアンナはまた、足音を聞きました。人影が夜の闇の間から現れました。

輝く冠を頭にのせ、肩からはたくさんのエメラルドとサファイアの

ついた大きな赤いマントを下げていました。

「こんばんは。」ジョアンナは言いました。

「わたしはジョアンナ。星のあとをついて行っているのです。」

「私もだ。」もう一人の王は言いました。

「私も星について行っているのだよ。私の名はガスパール。」

それからまた3人は、松林の中を歩き続けました。

いま一度、ジョアンナは足音を耳にし、3つめの人影が松林の闇と

藍色の影の間から現れました。

白いターバンを頭に巻き、肩からはたくさんの真珠が縫い取られた

長い緑のマントが下がっていました。その顔は黒い色でした。

「こんばんは。」彼女は言いました。

「私はジョアンナ。私たちは星について行っているのです。」

「私もだ。」さらにもう一人の王は言いました。

「星について言っているのだよ。私の名はバルタザール。」

それから、ジョアンナと3人の王・・・賢人たちは一緒に夜の闇の

中を歩きました。

地面には枯れた枝を踏みしめる音、木々の間を囁きながら通り過ぎる風、

そして3人の東方の賢人たちの大きなマントが、それぞれ緑色に、

紫色に、青色に輝いています。

ほぼもう松林の奥に到着したと思われる頃、大きな明るい光が遠くに

見えました。その大きな光の上で、星は動くのをやめました。

4人は歩き続けました。

 

 星が止まった場所に到着し、ジョアンナはドアのないみすぼらしい

小屋を見つけました。でもそこには暗闇も影も、悲しみすらも

ありませんでした。小屋は明るい光に包まれておりました。

なぜなら天使たちがその小屋を輝かせていたからです。

 

 マヌエルはそこにいました。

わらの上に、牛とロバに挟まれるように、微笑みながら眠っていました。

そのまわりには、天使たちがひざまづくようにして、浮かんでいました。

マヌエルのその体は光で出来たように軽く、輝いていました。

天使たちは、ひざまづくように、手をあわせ祈っておりました。

 

 そう、これが、天使たちの光に包まれたこれが、マヌエルのクリスマスでした。

「ああ、」ジョアンナはつぶやきました。

「ここは・・・・プレゼピウ! プレゼピウだわ!」

それからジョアンナは床にひざまづき、彼女の持って来たプレゼントを

そうっと置いたのでした。

 

(A NOITE DE NATAL: Sophia de Mello Breyner Andresen)


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